持病の話と女性の尊厳

 

持病の話をすると、腸の病気?と必ず言われるのだが、 違う違う そうじゃない。腸はとても強いのだ。お腹を下すことも無く、腹痛も滅多に無い。大腸内視鏡検査をする度に異常もなく、綺麗な腸だと褒められる。確かに内視鏡画像を見ても我ながら綺麗な腸だ。

私の持病は、子宮内膜症ステージ4とされる 稀少部位子宮内膜症の一つ 腸管子宮内膜症卵巣嚢腫という病気。稀少部位子宮内膜症は、肺・尿管・膀胱・腸管・臍などの他臓器に癒着する疾患。症状としては それらの臓器が腫れたり出血をする。世界的にも診断や治療ガイドラインがなく、発症原因も不明の難治性の疾患。基本的に完治しないため、治療をしながら気長に付き合って行く。病院へ行けば、注射と採血の嵐。毎日飲む薬の副作用でホルモンバランスが乱れる日々だ。不正出血、更年期症状、体重の増加、肌荒れに悩まされるが 徐々に慣れる。

 

20代前半で子宮内膜症を発症して、気付かずにそのまま数年経ち、激しい下腹部痛と下血をきっかけに 病院でMRI検査を受けて ようやく病気を発見できた。今思えば、16歳頃から経血量が多く、布団や椅子に漏れることも多々、夜用ナプキンを日常的に使い、凝血塊が頻繁に出ていたが、生理が来る度に皆同じように対処しているものだと思っていた。20歳で子宮頚がん検診を受け、それ以降 婦人科へ行くこともなかった。その結果、子宮内膜症が進行してしまったのだ。

 

婦人科闘病は、症状や治療と向き合うだけでなく、妊娠が難しかったり、それ以前に性行為が難しかったり、女性としての機能の喪失感に苛まれる…。恋愛や結婚を躊躇してしまう人もいるだろう。

子宮内膜症は女性の 10人に1人が発症すると云われている。不妊症を引き起こす代表的な疾患の一つだ。生理痛が重かったり 違和感を感じたら、早めに婦人科を受診することを薦めたい。子宮頸がん検診も定期的に受け、早期発見に繋げるべし。それから「冷えは万病の元」ということわざがあるように、女性は特に 体を冷やしてはならない。そして 血流を良くすべし。体を温めて 良い血の巡りを保つことで、心身の健康にも直結する。

f:id:oinuyuni:20240311180502j:image

私自身 婦人科闘病と向き合いながら、同じような病と闘う女性を見ていて、世間に対して強く思うことがある。それは「子なし女性や独身女性が肩身の狭くなる世の中にしてはならない」ということ。

世の中、産ませたがるような発言が多い。子供を産み育てる事は大人の義務だという考えを女性に押し付けるのは、立派なハラスメントだ。誰でも望めば妊娠ができて、元気な赤ちゃんが生まれてくると思い込んでいるような無知でデリカシーの無い人には愕然とする。軽視し過ぎている。

望んでいても 子供を授かれない人、死産、出産後に子供を亡くした人、色々事情があるのだ。

私の叔母は産むことを選択して、死産をした。その後、子宮摘出。しかし摘出した子宮から問題は見つからなかった。医療過誤だったのだ…。難病を患っていた旦那は数年後に亡くなり、死産に死別…。壮絶な人生を歩んでいる女性の一人だ。

無事に出産を終えられたとしても、産後の母体はボロボロで、回復する間も無く育児に入る。授乳中はホルモンバランスが異常になり、慣れない生活に疲れも溜まり、産後鬱になってしまう女性も沢山いる。個人差はあるが、産後からホルモンバランスが安定するまでには数ヶ月かかるのだ。この時期を乗り越えられたとしても、50代以降で更年期鬱になることもある。ホルモンバランスが崩れ、鬱病を患い 命を断つ人も多いのが現実。ホルモンの変化は精神的に影響を及ぼす起因の一つなのだろう。

産む選択をしても、産まない選択をしても、人生に於いて それなりのリスクを背負う。自分の体は自分のもの。そんな大事なことに、口出しする権利など誰にも無いのだ。そもそも、センシティブな話であり、他者が出しゃばるな。

少子化対策も「女性が子供を産む」というのが本質だ。子供を産めない人、産みたくない人に産めという話ではない。産みたい人に大いに産んで頂き、それを社会全体で どう支えて行くかが重要である。

既婚子持ちの人が独身の人に対して「独身は自由で良いよね」という皮肉めいた発言をよく耳にする。その温度感で言い返すのなら「結婚も、子育ても、自分で選んだ道だよね」である。わざわざ言わないだけで それぞれの苦悩があるのだ。独身だって色々ある。皆んな一生懸命生きているのよ。

人生は選択の積み重ねだ。自分の選択は自分で決めて誰のせいにもしてはいけない。その選択が失敗か正解かどうか 自分で決めることができる。捉え方は自分次第。

結婚や出産は人生を豊かにする為にある選択肢の中の一つでしかない。結婚をしない選択も子供を産まない選択も、本人が選んだ道。理由は様々。ただ何となくで産む人が居るように、ただ何となくで産まない選択をしたって良い。一度きりの人生、自分の意思で 自分の人生を決めれば良いのだ。